熊本県南部に位置する八代市。日本三急流のひとつである球磨川の下流が東西に流れ、西側の八代海に注ぐ。球磨川が潤す広大な八代平野は、実は面積の3分の2が江戸時代から昭和初期にかけての干拓事業によって造成された土地である。

干拓地のミネラル豊富な土壌や球磨川の清らかな水、温暖な気候に恵まれた八代平野は、九州有数の農業地帯で、多くの農産物が栽培されている。例えば、高品質な畳表の原料になるイ草や、世界最大の柑橘類としてギネス世界記録に認定されている晩白柚は、なんと全国の生産量の9割を八代市が占める。他にも、市町村単位での生産量が全国第一位のトマトや、山あいの棚田で栽培が盛んなショウガなど、八代市が全国トップクラスの生産量を誇る農産物も多い。

農産物以外にも、八代市には多種多様な特産品がそろう。1939(昭和14)年に操業開始した｢メルシャン八代工場｣で醸造される焼酎もそのひとつ。メルシャンといえばワインが有名だが、八代工場は｢八代不知火蔵｣の別名を持つ本格焼酎蔵だ。

原料別に米、麦、いも、黒ゴマなど、多品種の焼酎が造られている。中でも米焼酎と麦焼酎は、割り水に全国名水百選のひとつ･白川水源の湧水を使う。八代の仕込み水と白川水源の割り水が香りを際立たせ、軟らかさと味の厚みをもたらす。オリジナル酵母に米麹を使うのは、九州有数の米どころ･熊本ならではだ。

伝統と革新を追求して生まれた多彩な焼酎の中でも、現在注目を集めているのが、本格米焼酎｢八代不知火蔵 39度 米芳醇｣。イギリスの酒類品評会｢インターナショナル･スピリッツ･チャレンジ(ISC)2023｣で金賞を受賞し、フランスで開催された日本酒の品評会｢Kura Master2023 本格焼酎･泡盛コンクール｣の米焼酎部門で、プラチナ賞と米焼酎部門のトップである審査員賞を受賞した逸品だ。

米本来の良さを最大限に引き出すため、アルコール度数は焼酎としては高めの39度に仕上げられている。オリジナル酵母が生み出す、上品で華やかな香りが秀逸。料理と相性が良く、ロックやソーダ割りにすると香りが際立ち、後口に清々しい爽快感が広がる。

八代市内屈指の人気洋菓子店が｢ゆめの樹｣。18年前の創業以来、厳選素材を使用した美しいスイーツが多くの市民に愛されている。

創業当初からの看板商品･匠チーズケーキは、えりすぐったオーストラリア産クリームチーズを、新鮮卵を使ったカスタードクリームやメレンゲと合わせ、低温で焼きあげた半熟タイプのチーズケーキだ。ふわっと軽い口当たりで、口溶け滑らか。

｢濃厚すぎず、あっさりとしていて食べやすいと、お子さんからご年配の方まで幅広い層にご好評いただいています｣と店主の宮村 充さん。

｢黒豆和三盆マドレーヌ｣も人気商品。徳島産の和三盆糖、北海道産の黒豆、天然塩など厳選素材を使用。しっとりふわふわの生地は優しい甘さで、黒豆の塩気とのバランスが絶妙だ。

もう1個、もう1個……と、つい手が伸びる。どちらも上品なおいしさで、手土産にも喜ばれること請け合いだ。

漁師が営む有名和食店｢いけす料理 宗弘｣。店内にある巨大ないけすでは九州各地の海で水揚げされた魚介類が泳ぎ、注文を受けた後にいけすから取り出して調理する海鮮料理が評判だ。

そんな同店に近年登場した新メニューが｢ヤリイカしゅうまい｣。佐賀･呼子産のヤリイカを細かく刻み、魚のすり身と合わせたひと口サイズのシューマイだ。丸ごと1個頬張ると、イカのやわらかい食感や上品な甘さが口の中に広がる。

｢ヤリイカの甘みが引き立つ味付けにしているので、タレを付けなくても十分おいしく召し上がっていただけます｣と、考案者である副料理長の蓑田祐次郎さんは胸を張る。

一方、｢鯛のあらだき｣は16年前の創業当時からの定番メニュー。店内では定食として提供されており、シニア層を中心に人気が高い。丁寧に下処理を施した鯛のアラを、熊本の醤油で甘辛く仕上げている。こってりとした濃いめの味付けで、ほかほかの白ご飯と相性抜群だ。

近年、口コミで評判を集めている工房がある。2020年に開業した｢カネムマンソーセージ｣だ。店主の村上慎一さんが、食品添加物を極力使わず、えりすぐった食材でソーセージ、ベーコン、ハムを製造している。

東京や福岡の有名フランス料理店の元ソムリエという経歴を持つ村上さん。｢大好きなヨーロッパの食文化を多くの人に紹介したい｣という思いから、帰郷を機に食肉加工業への転身を決めたという。食肉加工の技術や衛生管理の知識を徹底的に習得するため、自家製ハム･ソーセージが名物の老舗ビアレストランや馬刺しなどを扱う食肉加工会社で計8年間修業。ソムリエ時代の人脈を活かし、実力派フレンチシェフたちの協力を得て商品を完成させた。

｢フランス料理のフォンドヴォーは、約1週間かけてだしを取ることで素材の旨みが凝縮します。同じように、ソーセージやハムもじっくり時間をかけて丁寧に仕込み、素材本来のおいしさを引き出しています｣と微笑む村上さん。柔らかい物腰と穏やかな語り口は、ソムリエ時代に培われたおもてなし精神のたまものだろう。

同店の人気商品を詰め合わせたのが、返礼品の｢カネムマンの手造り燻製セット｣。フライパンでジューッと焼きあげると、燻煙の豊かな香りと芳醇な旨みが口いっぱいに広がる。極上の味をぜひ堪能してほしい。

九州産黒毛和牛や馬肉などを取り扱う｢よしなが畜産｣。鮮度の良さとリーズナブルな価格が評判を呼んでいる。｢利益のみを追求せず、地元や全国のお客様に還元したいという思いで提供しています｣と、よしなが畜産 代表取締役の小松哲也さん。

上質な肉を低価格で提供できる理由は、独自の仕入れルートにある。グループ会社の卸し部門から直接一頭買いし、加工から販売まで自社で一貫して行う。また、自社の職人が確かな技術により1日に1〜2頭のみを解体。肉のスジや余分な脂身などを丁寧に処理しながら、限られた頭数をさばくことで、質の高い肉を提供できるという。

返礼品の｢上赤身 馬刺し｣は、カナダ生まれで、九州で1〜2年肥育された馬の中から、上質な肉のみを厳選して出荷している。半解凍の状態で薄くスライスして口に運ぶと、とろけるようなやわらかさとジューシーさに驚かされる。上品な甘みが広がり、感動的なおいしさだ。