奈良市は、国際文化観光都市の名にふさわしい歴史的建造物や文化財の宝庫。「奈良の大仏さま」で有名な東大寺や興福寺、春日大社など、八つの資産で構成される「古都奈良の文化財」は、世界文化遺産に登録されている。

さらに野生のシカが約1300頭生息する奈良公園や、山頂から奈良盆地を一望できる若草山など、美しい自然と歴史・文化が調和する奈良市は、時を忘れてゆったりと過ごせるまちとして人気を博している。

近年では伝統的な町家などを活用したおしゃれな雑貨店や飲食店、カフェなどが増加。特に駅や観光スポットから近い「ならまち」は、新旧さまざまなお店が軒を連ね、ショッピングや食べ歩きを楽しむ観光客でにぎわう。

数年前に爆発的にヒットしたアニメの聖地としても注目され、今も幅広い年代の方たちが聖地巡礼に訪れているそうだ。

観光はもちろんのこと、大阪・神戸・京都へのアクセスが良好な奈良市は、住みやすいまちとして子育て世代の人気が高い。2022年には年少人口（0〜14歳）の転入超過数では関西1位に選ばれ、さらなる発展を目指している。

ふるさと納税にも力を入れ、返礼品の種類を2024年よりも3倍に増やしているが、中でも人気トップといえば、ホテルなどの宿泊券だ。イチゴや大和牛といった名産品を通じて奈良の魅力を発見し、次は旅行に訪れようという方が多いそうだ。本稿ではユニークで新感覚の返礼品を中心にご紹介する。旅を楽しむような気持ちで誌面を見ていただきたい。

まず訪れたのは、若草山の中腹にそびえる「ANDO HOTEL 奈良若草山」。50年以上続いた老舗旅館を受け継ぎ、2020年に新たに誕生したホテルは、絶景のロケーションが魅力だ。ロビーラウンジに足を運ぶと、東大寺や奈良公園、興福寺の五重塔など、古都奈良の大パノラマがゲストを迎えてくれる。

「緑と光あふれる日中はもちろん、夕暮れから夜にかけての景色もおすすめです。新日本三大夜景の一つに選ばれた若草山での星空＆夜景ウオッチングは毎日無料で開催し、お子さんから年配の方まで楽しんでいただいています」と語るのは、総支配人の西田哲也さん。日常の喧騒から離れて、ゆっくりと五感で奈良を感じながら安堵する。そんな想いをホテル名の「ANDO」に込め、一組一組丁寧にもてなしてくれる。夜になるとラウンジの暖炉に宿泊客が集まり、交流を深めていく。そんな人と人とのつながりを大切にしているそうだ。

さっそく、最上階のペントハウススイートに案内してもらった。木の優しい温もりに包まれた広い客室には、自然を大切にした奈良のゆとりある暮らしが感じられ、心が癒されていくようだ。

「お部屋の隣にはファイヤーピットと専用の露天風呂を併設しています。どの場所からも奈良盆地の大パノラマを一望できるので、早めにチェックインして美しい景色の変化を感じていただきたいですね。夜は星空の下、ファイヤーピットでマシュマロを焼き、大切な人と楽しい時を過ごせますよ」

メインダイニングでは、和食の伝統とフレンチの技法や食材を融合させた料理を提供する。夕食は大和野菜や地元のお肉をはじめ、珍しい奈良食材をふんだんに使用。ここでしか味わえない月替わりのメニューは、リピーター客からも好評を得ているそうだ。

「お子さんから年配の方まで、カップルやファミリーなど幅広いお客様に気軽にご利用いただいています。旅行はもちろん、記念日などの大切なシーンもスタッフが心を込めて、すてきな思い出づくりをお手伝いさせていただきます」

蚊帳生地は、奈良の伝統産業の一つ。古来、神社仏閣の内装儀式用の織物がつくられ、その技法を活かした蚊帳が地域に普及し、発展を遂げていった。

「今でも東大寺の大仏様のお身拭いとして毎年献納しています。蚊帳ふきんは50年以上前、生地のはぎれでつくったことがはじまりです」と教えてくれたのは「白雪」の小笠原晶子さん。蚊帳生地は吸水性に優れ、汚れ落ちがいいことが特長だ。長期にわたり、雪のような白さを保つことから「白雪ふきん」と名づけられた

製法のこだわりを佐藤和寿さんに聞くと「多層に重ねて縫製をしているので耐久性と速乾性は抜群です」と自信を持って語ってくれた。

ふきんといえば白地が一般的だった当時、オリジナルデザインを取り入れたのが「友禅ふきん」だ。社長の乾啓二さんは、「絵柄は120種類以上。すべて自社でデザインをし、友禅染めの職人が一つ一つ丁寧に美しい絵柄に染め上げています」と多種多様のふきんを見せてくれた。

今回紹介するのは、一枚一枚絵柄の異なる30枚をセットにしたふるさと納税限定品。暮らしを華やかに彩るアイテムは、ちょっとしたプレゼントにも利用したい。

奈良市の中心街・ならまちには、県内で最も古い商店街「もちいどのセンター街」がある。その一角にレザーグッズ専門ブランド「革遊び HARUHINO」がオープンしたのは2014年のこと。

「奈良には手つかずの自然や文化遺産が数多くあります。そんな地域の魅力や革本来の良さをお客様の生活に取り入れてほしいという想いで創業しました」と語るのは、社長の辻之所恒久さん。国産の和牛革やホルスタイン革を使うのは、命のすべてを大切にしたいというこだわりから。

小さな店舗を構えて、自分たちで製作から販売までを手がけることで、上質な素材を使いながらもお手軽価格を実現している。

今回紹介する二つ折り財布について「植物性タンニンの鞣しは、手間がかかりますが、手に吸い付くように滑らかに仕上がります。シンプルなデザインは飽きることなく、使い込むほど風合いが増します」と、その魅力を教えてくれた。

一方、コロンとした形がかわいいポシェットは、手にすると革とは思えないほど軽い。

「できるだけシンプルな構造にし、薄くて丈夫な革を使っています」

足取りも軽くなる、お出かけにぴったりなファッションアイテムだ。

商店街には食べ歩きグルメがたくさんあるが、「魚万商店」はテレビ番組にも紹介された話題の店。創業から120年、かまぼこ・さつま揚げの老舗店として地域に親しまれてきた。

中でも一番人気は、すり身とメークイン、バターを合わせ、サモサシートで巻いて揚げた「バターポテト」だ。「食べ歩きができるようにスティック状にし、店頭で揚げたてを提供しています」と語るのは、専務の魚谷剛生さん。一番おいしい状態で食べてほしいという想いから、返礼品は当日に揚げて発送している。

2021年には、「カワイイ・おもしろい・新しい」をテーマにした新ブランド「nerimo．」を発表。第一弾「トリュフチョコみたいなさつま揚げ」は、味つけや意匠性が高く評価され、「第66回 全国水産加工たべもの展」水産ねり製品部門の「農林水産大臣賞」に選ばれた。「すり身と副素材の相性を大切にし、何度も分量や配合を検討しながらおいしさを追求。お客様から好評だった八つの味を厳選して商品化しました」と魚谷さんは語る。魚肉タンパク質が豊富なさつま揚げは、世界が注目するヘルシーフード。お子さんから年配の方まで安心して食べていただきたい。