熊本県南部に位置し、県下第二位の人口を擁する八代市。日本三急流の一つである球磨川が東西に流れ、八代海へと注いでいる。球磨川の水を利用した製紙業が盛んな工業都市として知られるほか、九州中部の海の玄関口という顔を持つ。近年は八代港に国際クルーズ船の受け入れ拠点「くまモンポート八代」が整備され、世界に開かれた玄関口として発展を続けている。
一方、山間部は九州中央山地の山々が連なり、平家落人伝説が残る秘境・五家の荘がある。変化に富んだ地形が織りなす豊かな自然も魅力だ。

球磨川河口に広がる八代平野は、実は面積の3分の2が干拓地である。干満差が大きい八代海の沿岸部では、長い年月をかけて少しずつ土砂が積もり、広大な干潟を形成。江戸時代から昭和初期にかけて行われた干拓事業により、この干潟が農業に適した干拓地として造成された。
干拓地のミネラル豊富な土壌や球磨川の清らかな水、温暖な気候に育まれた八代平野は、九州有数の農業地帯。多種多様な農産物が栽培されており、世界最大の柑橘類としてギネス世界記録に認定されている晩白柚は、八代市が全国の生産量の9割を占める。トマトの栽培も盛んで、市町村単位でのトマトの生産量はなんと八代市が全国第一位だ。
八代市の返礼品も、八代平野が育んだ良質な農産物や、農産物を生かしたオリジナルの加工品がそろうので目が離せない。

八代市の北東部に位置する東陽地区。広大な八代平野と険しい九州山地に囲まれた山里で、全国トップクラスの生産量を誇るショウガの産地として知られる。そんな東陽地区にある会社が、業務用のカット野菜を製造・販売する「トーヨー」。これまでの技術とノウハウを活かし、2023年10月から新規事業として規格外の野菜を使った冷凍食品の開発・製造を開始した。中でも話題を集めているのが「ＫＡＷＡＭＡＴＡ ＬＡＢ・ピザ」。熊本県産を中心に九州産・国産の厳選食材を使用し、生地もソースもすべて自社製造の冷凍ピザである。
ユニークなのが製造場所の河俣工場。廃校になった地元の河俣小学校跡を活用しており、例えば旧家庭科室が加工室、旧校長室が凍結室となっている。
今回、返礼品に登場したのは活「マルゲリータ」「しょうがネーゼ」「LOVE IS 大葉」の全3種。八代産はちべえトマトを使用したマルゲリータは、トマトソースの濃厚な甘みや酸味が活きた定番のおいしさ。東陽産ショウガが主役のしょうがネーゼは、清涼感のあるショウガの辛みが後を引く。LOVE IS 大葉は、大葉ソースの爽やかな香りと芦北産チリメンジャコの塩味やカリカリ食感が絶妙にマッチ。いずれも北海道産小麦粉100％の生地や阿蘇産の無添加モッツァレラチーズとも好相性だ。
おやつやおつまみに重宝する程よいサイズで、冷めてもおいしいと評判。「保存料・着色料不使用で100％無添加なので、お子さんにも安心して召し上がっていただけます」と営業部の船岡寛久さんは胸を張る。

八代市は畳表の原料となるイ草の生産量も全国一。全国の生産量の約9割を占める。「ナカヤマノウジョウ」の中山貴之さん・美穂さん夫妻はイ草農家の四代目。イ草の栽培・収穫から畳表の製せい織しょくまで行う。苗から育てたイ草は、刈り取り後に泥染め、乾燥、選別、検品、織りなど数十の工程を経て、ようやく畳表となる。
「八代産のイ草で丹精込めて織った畳表は、香りや耐久性が格別です」と中山さん夫妻。しかし近年は中国産の安価な畳表の普及や住宅の洋風化に押され、国産畳の需要が減少。生産者の高齢化や後継者不足もあり、八代市のイ草農家が激減していることに危機感を抱いているという。「日本の伝統である畳表を守り続けるためにもイ草をもっと身近に感じてもらいたい」。そんな中山さん夫妻が考案したのが「イグサでつくった消臭パック」だ。消臭効果やリラックス効果などイ草の豊かな効能に着目し、畳表として織れなかった丈の短いイ草を有効活用した商品だ。臭いが気になる靴の中や冷蔵庫に入れたり、自家用車の車内や就寝時の枕元に置いて爽やかな香りを楽しんだりとさまざまな場所に使用できる。
現在、ホテルや旅館のアメニティーとして使える商品を考案中だ。

球磨川の清らかな水と八代海の豊富なミネラルに育まれた干拓地で、米やキャベツ、スイートコーンなどを栽培する「ヤツシロミズタFarm」。毎年1月から10月頃にかけてハウス内で栽培・収穫するのがアスパラガスだ。
土作りにこだわり、除草剤は不使用。熊本特産の球くま磨焼しょうちゅう酎から作られた肥料や八代産ヨーグルトを発酵させて培養した乳酸菌の酵母をまくことで、通気性・排水性・保水性・保肥性に優れたふかふかの土壌を実現している。また、葉面散布による施せひ肥では八代産の蜂蜜を希釈した液体肥料を使用するなど、独自の栽培方法を導入。「熊本でしか出せない味を追求しています」と、水田大地さん・さつきさん夫妻は言う。
みずみずしいアスパラガスはシャキッとした歯触りで甘みがあり、加熱すると柔らかさが増す。サラダや肉巻き、炒め物など多彩な料理に使える万能野菜で、「一番おすすめの調理法は丸焼き。また、ちくわの穴に詰めて揚げるとお子さんに喜ばれますよ」と教えてくれた。

1988（昭和63）年創業、食肉加工・卸販売会社の「サン・ビーフ」。最新設備を備えた工場で加工した食肉を大手の量販店やスーパーに卸している。今回、返礼品に登場した「牛タン」は、一頭の牛からわずかしか取れない希少部位。厚切りと薄切りのセットで、食べ比べできるのが魅力だ。
贅沢に厚さ1㎝にカットした「厚切り」は食べ応え抜群。牛タン特有の歯切れの良い食感や旨みを存分に楽しめる。「当社では独自のスリット加工を施し、切れ目を二回入れます。熱が通りやすくなることで、よりジューシーでやわらかい食感を実現しています」と社長の髙浪友和さん。短時間で調理できて食べやすい「薄切り」は、口溶けの良さが秀逸。子どもや高齢者にも食べやすいと好評だ。
今回の返礼品は形状が多少不ぞろいの“訳あり”だが、もちろん品質に問題はない。専門店のような味わいを家庭で堪能してみてはいかがだろう。