都市と自然が共存するまち、不動の人気を誇る返礼品は?
福岡県北部、九州の最北端に位置する北九州市。工場が集積する「鉄のまち」として知られる一方、関門海峡や日本三大カルストの一つである平尾台を筆頭に、海山の豊かな自然が点在。子育てしやすい環境を順位づけする「次世代育成環境ランキング」(NPO法人エガリテ大手前が実施)では、政令指定都市部門において、11年連続で総合第1位に輝いている。
ふるさと納税については、平成30年度からバックヤード業務以外の返礼品の発掘・PRを市職員が行う体制に変更。事業者とともに魅力ある地場の魅力発信に努めたことで、令和3年度は18億円超と過去最高の寄附を集める大躍進を果たした。
そんな返礼品のなかでも、ひときわ高い人気を誇るのが、ふぐである。この地方では、縁起を担いでふぐのことを「ふく」と呼ぶ。その需要が最も高まるのは、人が集まる年末年始。ふぐは新たな年に福を招くご馳走なのだ。
小倉の老舗料亭「ふく一」の「豪華とらふぐ三昧セット」は、この地方ならではの神経締めを施し、水分を適度に取り除きながら寝かせることで、旨みとぷりぷりの食感がアップ。到着日から逆算してふぐをさばくため、一番おいしいタイミングで味わえる。
しかも、冷凍ではなく冷蔵で発送。これがリピーター続出の所以だ。
人気の特大うなぎとソウルフードの肉うどん
北九州市は、古くから九州と本州を結ぶ交通の要衝として栄え、県庁所在地以外で初めて政令指定都市になったことで知られる。東西に長くのびる海岸線には、石炭の積み出し港や官営の八幡製鉄所が造られ、日本の高度成長期を支えた。
そんな企業人たちに愛されてきたグルメの一つに、うなぎがある。全国的に知られた名店もあり、北九州市民は少しばかり、うなぎにはうるさいのだ。「九州産うなぎ蒲焼特大4尾」は、1尾200g以上の特大サイズだけを厳選。「豊前小倉流」と称する独自の焼きを再現した工場で、余分な脂や臭みを落とし、旨みを凝縮させた蒲焼きに仕上げている。
「うちの蒲焼きの特長は、よく焼き込んでいることです。かなり脂を落としますから、250gのうなぎだと、160gくらいになってしまいます。歩留まりは悪いのでコスト的には厳しいのですが、その分、旨みが増すわけです」と、「福岡養鰻」の上谷雄一さん。
このサイズがそろうのも、鹿児島や宮崎に40ヵ所以上も仕入先を持っているからこそ。丸大豆醤油と濃口醤油をブレンドした、甘めでもキレのいい洗練された味にも定評がある。
もう一つ、北九州を代表する味といえば、「資さんうどん」だ。
看板メニューの「肉うどん」がふるさと納税に登場するや、「あのうどんが食べられる!」と、申し込みが殺到。「ふるさと納税でファンになりました、とのお声もいただきます」と、通販部の則末絵美さんは微笑む。
サバ節と昆布、椎茸などで丁寧に取った出汁と、モチモチとした食感の麺に、九州の醤油などで甘辛く煮込んだ牛肉がたまらない。使いやすい個包装もポイントだ。
ものづくりのまちが誇る、高い技術を駆使した返礼品
新型コロナウイルス感染症対策でこまめな手洗いが推奨される中において、手肌に優しい「手洗いせっけんバブルガード」が、北九州市の返礼品の中でも、屈指の人気を集めている。
手洗いせっけんバブルガードには、アルコール・抗菌剤、さらに香料・着色料・酸化防止剤・合成界面活性剤といった化学物質が使われていない。また、成分は水とカリ石ケン素地のみの無添加石けんというのも、人気を集めている理由だ。
実は、製造元である「シャボン玉石けん」は1960年代、合成洗剤を主力商品としていた。しかし、1971年に国鉄(現JR)からの要請で、無添加石けんを試作・製造。試作品を先代の社長自らが使ってみたところ、長年悩まされていた湿疹がきれいになり、合成洗剤の使用を再開すると湿疹が再発。自身の長年の悩みが、主力商品の合成洗剤だったことを知り、思い悩んだ。しかし、「体に悪いとわかった商品を売るわけにはいかない」と一大決心。それまで製造していた合成洗剤の販売をやめ、添加物を使用しない無添加石けんの製造・販売に切り替えたという。
シャボン玉石けんでは、昔ながらの釜炊き製法である「ケン化法」にこだわって製造している。ケン化法で作った石けんには天然の保湿成分が含まれていて、それがしっとりと洗い上がる秘訣ということだ。
このほか、「ものづくりのまち」を掲げる北九州市ふるさと納税返礼品には、個性的なアイテムが多いのが強みである。次に取り上げる「ペットソファ・ロワン・ノルディ」もその一つ。
1923年創業、ソファベッドを世に送り出した「シノハラ製作所」が手がけるのは、犬・猫用ソファ。柴犬を飼い始めた社長の篠原元樹さんが、「こんなソファがあったらいいな」とひらめいたことが、ユニークな家具を生むきっかけとなった。
昇り降りしやすいよう段差を低くし、短い足にカーブをつけて高級感を出すなど、ペットと飼い主双方の使い勝手と安全性、美しさを追求。ペットがひっかいても傷がつきにくい耐久性の強い布地を厳選し全色に使用した。
ソロキャン仕様のグリルや、グランピング宿泊券も!
北九州市のふるさと納税では、コロナ禍のニーズを捉えた、地元企業の個性的な返礼品が続々登場。なかでも、大きな伸びを示しているのが、アウトドア関連のアイテムだ。
「HID」業用ロボットを用いた生産ラインの自動化設備を提案・開発する企業。本業が好調なときこそ多角化をめざそうと、社員の提案からソロキャンプに特化したアウトドアグッズの企画・販売に乗り出した。
ノウハウが何もないところからスタートし、最初に目をつけたのが肉や野菜を焼くグリル。とことんこだわったのは軽量かつコンパクトであることで、何度も試作を重ねた結果、多くのキャンパーが愛用する焚き火台に取り付ける「ヤドカリグリル」が誕生した。
収納時の厚みはわずか4㎜。この薄さを実現すべく協力したのが、0.1㎜の誤差で鉄をカットする高度な技術を持った「佳秀工業」である。両社を結びつけたのは、魅力ある返礼品の開発に力を注ぐ市役所のふるさと納税担当職員。こうして完成したヤドカリグリルは、キャンプ系ユーチューバーに注目されるところとなり、ふるさと納税でも大躍進が期待されている。
手ぶらでラグジュアリーなキャンピング体験がしたいという人なら、「フォレストキャンプ小倉1泊2日宿泊券」も見逃せない。2021年春、北九州国定公園にある「ソラランド平尾台(平尾台自然の郷)」内にオープンした話題のグランピングが楽しめるスポットだ。
バリ風の洒落たインテリアで統一されたテントは冷暖房完備。Wi‐Fi、冷凍冷蔵庫、ケトルなどが備わり、ホテル並みの快適さを実現。イタリアン出身のシェフが手がける夕食には、前菜の盛り合わせやトリュフをかけて仕上げるハムエッグ、3日がかりで仕込む牛すじカレーなども並び、メインのバーベキューを盛り上げてくれる。
ふるさと納税では1名分の宿泊券が送付されるので、利用人数が増える場合には予約時に人数を告げ、現地で差額を支払うだけと利用するのも簡単だ。これから星空がいっそう美しくなる季節。大自然に身を投じ、日頃のストレスを発散させてほしい。