札幌市と新千歳空港の間に位置する恵庭市は、交通アクセスが良く充実した都市機能と豊かな自然環境に恵まれたまち。人気の観光スポットである恵庭渓谷には「白扇の滝」「ラルマナイの滝」「三段の滝」があり、春夏は鮮やかな緑が、秋は美しい紅葉が楽しめる。「花のまち」としても知られており、市民主導のオープンガーデンや花のまちづくりが話題を呼ぶほか、個性豊かな庭園を中心とした花の拠点「はなふる」は、訪れる人の目を楽しませている。
さらに同市は、恵庭渓谷を源流とした水資源が豊富な「水のまち」でもある。市内には複数の工業団地が点在しているほか、さまざまな企業の製造工場や食品加工場が建ち並んでいる。

1991年の創業以来、妥協しないものづくりを続けてきた「ナカガワ工業」。電子部品の組み立てやハンダ付けなどを行う下請けメーカーとして誠実に仕事に取り組むなかで、技術の進歩や市場変動の影響で激しい浮き沈みを経験してきた。「一時はオルゴールと万華鏡の組み立てを主力に頑張っていました」と社長の中川富雄さん。そんなときに出合ったのが、今回の返礼品である「マルチヒーター」だった。「窓際に簡単に設置できるヒーターで、窓からの冷気を防ぎ、室内外の温度差を少なくして結露やカビ対策にも効果的という、道総研工業試験場の技術支援商品でした。ちょうど組み立て先を探していたので、トントン拍子に話が進んで請け負うことに。市場の評価も良く、暮らしを快適、使って納得省エネタイプで安心・安全主力事業に成長しました。しかし、販売元企業が経営危機に陥り、共倒れの恐れから販売も自分たちでせざるをえない状況になりました」
2011年には自社で国内部品の仕入れを開始。組み立てまでの一貫生産体制・販売体制を整え、下請けからメーカーへと姿を変えた。「何とか販路を見つけようと道外の展示会に出展していた際に北海道のテレビ局の目に留まったのが転機になりました。14年から番組内で紹介してくれたことで認知度と信頼度が高まり、道内外へと販路を拡大することができました」
「マルチヒーター」で培った技術を活用し、その後開発に取り組んだのが、トイレ用の暖房器具「イコロ」である。トイレでのヒートショック対策として、安全で高品質なヒーターを求める声が多く寄せられたことで、中川さんの職人魂に火が着いた。知り合いの工業デザイナーの協力を得て完成まで約4年。炭素繊維ヒーター内蔵の湾曲アルミパネルを向かい合わせにすることで煙突効果を発揮し、少ない電力で自然対流と輻射熱の効果によって表面温度約55℃で「ほんのり暖かい」をキープする。パネル表面が高温になると安全装置が働きスイッチが切れるので、安心して使用できる点も評価され、こちらもまたテレビで紹介されるとともに、19年度の「北海道地方発明表彰」で発明奨励賞を受賞した。
さらにその翌年に開発した「フットヒーターアシリ」は、既存の竹踏みヒーターを改良して全国で発売。足全体を乗せられる平面設計で耐荷重は約150㎏。土踏まずに当たる部分に凸とつ部を配置し、足裏からじんわりと温めてくれる。「目指すのは他にない商品。自社生産にこだわった高品質なメイドイン恵庭の商品をこれからも皆さまにお届けしていきたいです」

1951年創業の「やまぐち食品」は、道産大豆にこだわった豆腐や油揚げなどの大豆製品の製造販売を手がける老舗メーカー。「目指すのは大豆の風味を感じつつ、さっぱりした味わいで一丁ペロリと食べられる豆腐です」と話すのは三代目の山口龍二さん。「うちの商品に欠かせないのが、厳選した道産大豆と恵庭岳の伏流水で、約10年前から恵庭産大豆も使用しています。生産量の多い道産大豆のユキホマレは甘みやコクがありますが、タンパク質含有量が低く固まりにくいんです。そのため、凝固性の高い品種である『とよみずき』や『とよまどか』などをブレンドしています」
〝作りたてのおいしさと笑顔を直接届けたい〞と2003年には札幌市内のスーパーでの直売も開始。バラエティ豊かな豆腐製品や油揚げのほか、子どもも大人も大好きな豆乳ドーナツや今回の返礼品でもある「豆腐ハンバーグ」などの惣菜を通して、食べ方の提案もしている。小揚げを甘辛く炊いた「道産子いなり」は、手軽においしく稲荷寿司がつくれるとファンも多い。「昔は小揚げが人気でしたが、今は手間をかけずに食べられる味付けタイプが売れています」。規格外の刻み揚げを甘辛く仕上げた「ごはんのおとも」は、現場スタッフのアイデアから誕生したひと品で、その名前の通りご飯が進む。ほかにもタンパク質やカルシウム、鉄分豊富な「生ゆば」など、自慢の品をぜひ味わってほしい。

1893年に福岡で創業し、だしの「茅乃舎」や明太子の「椒房庵」で知られる食品メーカー「久原本家」。そのグループのひとつであり、恵庭に本社を持つ「久原本家北海道」が9月に「北海道アイ」ブランドを「北海道くばら」にリブランドした。営業本部の樋口良仁さんによると「北海道の人たちにとっては当たり前の食材やメニューも、道外から見たら非常に興味深い。そんな北海道の個性的な味を道外の方にも楽しんでいただけるよう、道産素材と味を追求しつつ簡単に調理できる商品を開発し、発信しています」
今回の返礼品のひとつである「北海道豚丼のたれ」は道民にも人気の商品で、二段熟成醤油で味に深みを持たせ、道産のてんさい糖を使用してコクのある甘みをプラス。自宅では再現しにくい、炭火で焼いたような香ばしさが感じられ、豚丼はもちろん、焼き鳥や焼きそば、野菜炒めなどにも重宝する。さらに道産花咲ガニのだしを贅沢に使用した調味料「北海道かにだし」は、豊かな香りが食欲を刺激する。カニの風味と旨みが凝縮しており、いつもの料理が格段においしくなると好評だ。ほかにも道産炒め玉ねぎと道産ホタテエキスを使用し、複数のスパイスで調味した「北海道スープカレー」も、自宅で本格的な味わいが気軽に楽しめる。
新商品の「鍋つゆシリーズ」は、これからの季節に活躍すること間違いなしで、「オススメなのが『北海道豚すき焼き』のたれです。北海道は、すき焼きに豚肉を使う家庭が多いのですが、これがおいしい。道産昆布だしと再仕込み醤油、濃口醤油を合わせた特製のたれで、豚肉をおいしくお召し上がりください」と樋口さん。
魚介好きには花咲ガニのだしがたっぷり入った「北海道かにすき」やホタテ干し貝柱のだしが効いた「北海道寄せ鍋」がいいだろう。季節の野菜や海の幸を合わせることで素材の旨みが汁に溶け込み、最後のひと口までおいしく食べられる。ご自宅で手軽に北海道の味を存分に楽しんでほしい。