製鉄業を中心に「鉄のまち」として発展した北九州市。全国初の「ＳＤＧｓ未来都市」に選定され、持続可能な発展を推進。自然豊かな都市景観と歴史が融合した未来志向のまちとして注目を集めている。2023年度のふるさと納税は、寄付額が22億8000万円を超え、7年連続で過去最高を更新。寄付の件数も前年度より1万5000件余り多い約12万件で、過去最高となった。

人気の返礼品には、北九州学術研究都市における産学官共同による研究開発から世に出たものも多い。最初に取り上げる「フジコー」の光除菌空気清浄機「ブルーデオＳ型」もその一つだ。小さなボディで、ペット臭や介護臭、カビ臭、さらにはアレルゲン物質の花粉やダニ、カビなども元から分解・除去する日本アトピー協会推薦品だ。高い消臭力を持ちながら、すぐれた静音性を誇り、次亜塩素酸などの放出物も一切ないため、「安心して使える」と全国から喜びの声が届いている。「特にペットのおしっこ臭が気にならなくなった、音に敏感な動物にもやさしいとの声が多いですね。最近はペットのアレルギーも増えていますが、その点でもご好評をいただいています」と、フジコー総務部の染矢裕紀さん。フィルターは交換不要。軽くてコンパクトなので、置く場所を選ばず、ペットが触れない場所に置けるなど、移動が楽なのもうれしい。経済産業省第４回「ものづくり日本大賞」の特別賞受賞技術が織り込まれた名品だ。

続いて紹介するのは、三菱ケミカルグループの「新菱」が提供する注目の返礼品。特許技術で1本（10g）のゼリーに、市販水素水の100倍量（――註1）もの水素を閉じ込めた「高濃度水素ゼリー」である。
水素を「食べる」話題のサプリメントで、睡眠の質を高める機能が報告された日本初（――註2）の機能性表示食品だ。水素分子を基材に溶かすのではなく、水素分子の微細な泡を、ゼラチンなどの高分子内に分散して保持させている。この高い技術により、日本食糧新聞社が主催する第37回「新技術・食品開発賞」を満場一致で受賞した。

ローズヒップ風味の定番ゼリーのほか、2種類のペット用を含めて7種類があり、最近はビタミンやコラーゲン、エラスチンを加えた「VitaminC＆Vitamin　D3」が美容と健康を気にする女性たちに人気上昇中。モデルや芸能人に愛飲者が多く、美容雑誌にもたびたび取り上げられている。この秋には、地元の老舗「溝上酒造」とコラボした酒粕タイプが仲間入り。北九州ＳＤＧｓマークも取得した信頼のサプリメントだ。

註1：高濃度水素ゼリーの水素量0・3mg、水素濃度0・3ppmの場合

註2：水素分子を機能性関与成分とする機能性表示食品として

次に、1923年創業で、昨年100周年を迎えた「シノハラ製作所」から二つの返礼品をご紹介する。人気の「ペットソファ」と、日本のソファベッドの生みの親である同社が自信を持って送る「ソファベッド・エブリ」である。
ペットソファは、高低差を抑えてペットの昇り降りをしやすくし、汚れを簡単に落とせて引っかきにも強いファブリックを使用。クッションは取り外すことができる。
一方、「ソファベッド・エブリ」は、左右のアームが動くのが特徴。ベッドの状態ではもちろん、ソファにしたままでも好みのポジションになるので、楽にちょい寝ができる。左右のアームは角度調整もスムーズで、本体を引き出し、ベッドの状態にする際も、余分なスペースは不要だ。どちらも8色の中から選べる。

海の宝石「とらふぐ」を、職人の技術で、透き通るような薄造りに仕上げたふぐ刺し。親戚や友人、家族の集まりを華やかに彩る美食の華である。
返礼品の中でも、ひときわ高い人気を誇る「ふく一」の「本場関門とらふぐ刺身セット」は、魚の鮮度を保つ神経締めを施し、水分を適度に取り除きながら寝かせることで、旨みとぷりぷりの食感が劇的にアップ。最もおいしいタイミングでお届けできるよう、到着日から逆算してふぐをさばく念の入れようだ。

やや厚めに刺身をひくのも、ふく一のこだわり。33㎝サイズの皿だと、通常のふぐ刺しは150gほどだが、この店は約200gもあるという。そのうえ、なんといっても冷凍ではなく冷蔵品である点が、ライバルの品を寄せつけない最大の強み。「冬場のふぐは身が締まり、味も歯応えも最高です」と代表の荒金剛二さんは自信をのぞかせる。

食都・北九州市には、うなぎの名店も多い。北九州市の小倉周辺は、城下町として発展した歴史があり、贅沢な食文化が広がりを見せた。企業の接待でもうなぎを供する料亭が多くあったという。
そういった歴史背景とともに味を追求し、「焼き方やタレに独自の工夫が生まれたことが数々の名店誕生につながったのでは」と話すのは、「福岡養鰻」営業部の上谷雄さん。福岡養鰻では、「日本一おいしいうなぎの蒲焼をつくること」を目標に掲げ、「豊前小倉流」という焼き方を標榜している。「豊前小倉流の最大の特徴は、蒸しの工程の代わりにうなぎの身を折り曲げて焼く『こなし』を入れて、皮目の内側のゼラチン質が溶け出すまで焼きあげる点にあります」と取締役・谷口暢基さんも言葉を重ねる。それによりクセや臭みが消え、うなぎの旨さが凝縮されるという。「特に職人が手焼きするうなぎは、ぎりぎりまで焼き込むため、身が大きくしっかりしたうなぎを厳選しました」と谷口さん。手焼きに回せるのは、仕入れたうなぎのわずか5％というからすごい。

最後を締めくくるのは、新しい時代の「小倉織」として誕生したブランド「小倉縞縞」から、用途の異なるバッグ2種類と、ファブリックパネルをご紹介する。
小倉織は、江戸時代初期から織られていた織物で、経糸が色のリズムを生む、立体感あふれる縞模様が特長だ。>染織家・築城則子氏が1984年に復元・再生し、モダンでスタイリッシュなテキスタイルとして現代に蘇った。
戦後アメリカの抽象絵画を代表するフランク・ステラの世界観へのオマージュが込められた「ステラバッグ」は、マチがあり、Ａ4サイズが入るので仕事やお稽古ごとに大活躍。男性の愛用者も少なくない。
「モバイルサコッシュ」は、スマホやちょっとした小物を収納できる人気のミニバッグ。カードを素早く取り出せる内ポケットがあり、開閉はファスナーだから安心だ。さらに、インテリア雑誌でも話題なのが、建築家・隈研吾氏とのコラボから生まれた「ＫＵＭＡＳＨＩＭＡ」のファブリックパネル。草木をモチーフとした色、光から生まれる陰影が美しい。壁にかけたり、立てかけたりするだけで空間をおしゃれに演出してくれる。そんな小倉縞縞は、機械織りながら、深みのある色合いとグラデーションの表現に、緻密な糸の構成と織りの技術が欠かせない製品だ。ここにも「ものづくりのまち・北九州市」の矜持が見えてくる。