東京都のほぼ中央に位置する武蔵野市。住みたいまちランキングで毎年上位に輝く吉祥寺があるのが同市だ。商業施設・文化施設ともに充実し、都心へのアクセスも良好。暮らしやすいまちとして評価されている。
武蔵野市が誕生したのは1947年のこと。以来、サブカルチャーの発信地として、同市は発展し続けてきた。演劇のまちとして。後にフォークやジャズのまちとして。そして、現在は漫画やアニメの発信地として。「ヤッターマン」を制作したタツノコプロや「新世紀エヴァンゲリオン」を手掛けたガイナックスなど、多くのアニメスタジオが武蔵野市に拠点を置く。
武蔵野市は大まかに3つの地域に分かれる。三鷹駅を中心とした中央地域。市内でもっとも早く駅が開設された武蔵境地域。そして、吉祥寺地域である。いずれの地域もみどりが豊か。武蔵野中央公園や境山野緑地(独歩の森)など、昔ながらの自然環境が多くまちに残っている。
武蔵野市では、景観資源を活かしたまちづくりを推進。同市が天然記念物に指定した成蹊学園のケヤキ並木などの維持管理にも関わっている。令和元年度に土木費として約70億円を計上した同市は、ふるさと納税による寄附金を街路樹の維持と管理に活用する方針だ。

武蔵境駅周辺では、JR中央線高架化に伴い、再開発が進んでいる。2011年には文化拠点「武蔵野プレイス」もオープン。駅周辺も活性化し、賑わっている。高架下にもユニークな店が次々に誕生。たった3坪のビール醸造所「26Kブルワリー」もそんなお店のひとつだ。同店ではクラフトビールを提供。「素材や季節に合わせた個性的なクラフトビールを醸造し、できたてをご提供しています。だから、どんな方でも何回か来てもらえれば、自分の好きな味に出会えるはず。クラフトビールをあまり飲んだことがない方のきっかけになれば」と代表の見木久夫さんは話す。店内では食事もできるため、料理とのペアリングを楽しみながら、自分の好きなビールを見つけたい。

吉祥寺は、ファッションを気軽に楽しんでいる人たちがふらっと訪れるまちでもある。そんなまちで誕生した時計ブランドが「Knot」だ。スマホが普及し、時計離れが進む現代。同社は時計を〈見るものではなく、見られるもの〉〈腕元でパーソナルを表現するリストウェア〉と再定義する。ゆえに、取り扱う時計は本体もベルトも組み換え自由。お洒落を楽しむように、その日の気分でベルトを着替えるスタイルを提案する。
Knotのカタログには日本の伝統工芸や技術とコラボした時計も並ぶ。「Knot」の意味は〈結ぶ〉と〈絆〉。世界に〈日本のものづくり〉を発信し、世界と絆を結ぶことを目指す同社にふさわしい名前である。

吉祥寺では今、ひとつのジャンルにこだわった専門店が次々と生まれている。2016年にオープンしたチョコレート専門店「プレスキルショコラトリー」もそのひとつ。同店舗では、ショコラティエの小抜知博さん自らがカカオ豆を買い付け、自社のアトリエで豆からチョコを製造していく。
「他人のためではなく、自分のために買うという方が嬉しいですね」とは小抜さんの弁。チョコレートの鮮度にこだわったプレスキルのチョコは見た目も美しく、香りもふくよか。カカオ本来の香りと、ほどよい酸味がたまらない。一口噛みしめれば、非日常感がそこにある。自分へのご褒美として贅沢に味わいたい。