【独占!】ふるさと納税制度の創設者の菅義偉前首相にインタビューしました!
私が生まれ育ったふるさとへの思いが「ふるさと納税制度」創設の原点です。
菅 義偉前首相が、総務大臣時代に打ち出し、官房長官になってから、さらに拡充させた「ふるさと納税制度」。制度発足から16年目を迎えた今、制度化へ踏み切ったときの思いを振り返っていただき、その必要性について、お話をうかがいました。
インタビュアーは、『ふるさと納税ニッポン!』冬春号にて4年連続で表紙を飾っていただいている金児憲史さん、楊原京子さんご夫婦が担当しました。
───総務大臣時代に提唱された「ふるさと納税制度」ですが、どんな思いがあって、制度を創設しようと考えられたのでしょうか(金児)
菅 義偉氏(以下 菅氏):私は、秋田で生まれて、高校卒業まで秋田で育ちました。その後、上京して進学したのち政治の世界に入りました。農家の長男だった私は、家業を継がず、政界入りしましたから、自分を育ててくれたふるさとのことは、いつも気になっていました。何かよい方法で、ふるさとへ還元できないか、ふるさととの絆をつくれないかと、ずっと考えていたのです。私と同じ思いを持っている人は多くいるはずだ、国民からの賛同は得られるだろうとも思っていました。
第1次安倍政権で思いがけず私は、総務大臣となり、これまで温めていた仕組みの創設に着手します。総務大臣になって調べてみると、当時、生まれてから高校を卒業するまでの行政サービスに自治体は、約1,600万円かけていました。それだけかけて育ててくれたのに、いざ、自分が働いて、税金を納めるとなると、住んでいるところ、つまり都会になるのです。やはり、こうした仕組みが必要だと改めて確信し“今やらないで、いつやるのだ”という固い決意で、制度創設を表明しました。

───制度化にあたり、賛否両論あってご苦労されたこともあったのではないでしょうか(楊原)
菅氏:当時の官僚からは、税の根幹を揺るがす、と当初猛反対をされました。消防や救急、教育、福祉、ゴミ処理といった行政サービスを受けられるのは、現在住んでいる住民であり、その方々が税を負担するという受益と負担の原則から外れると反対されたのです。
しかし、大きく社会が変わったなかで、そうした戦後すぐのシャウプ勧告に基づく税制の考え方も当然変えていくべきです。人生を通じての受益と負担という考え方があってもよいのではないかと。
また「ふるさと」の定義ができない、法制局に認められない、とも言ってきました。納税する人が故郷だと思ったところならどこでもいいだろう、と反論しました。そうした議論を積み重ね、官僚が主張するできない理由をことごとく打ち返し、制度創設に向けて動き始めました。研究会を作り、どういった制度にするか専門家に検討していただきました。自分の選んだ自治体に寄附をして、一定の上限はあるものの、寄附額のうち自己負担5,000円(現在は2,000円)を除いた額が原則として住民税と所得税から全額控除されるという制度の仕組みができあがりました。

菅氏ゆかりの地・神奈川県横浜市と秋田県湯沢市を描いた。
───立案から制度化までに、どのくらいの期間を要したのでしょうか。また、施行後の成果についてもお聞かせください(金児)
菅氏:表明してから1年で法案が成立し、実現させることができました。こういうことは、早くやらないといけない。やるぞ! と決めてから、すぐに実行することが重要です。
2008年5月から制度が開始したふるさと納税は、初年度の(全国)寄附金総額が、約81億円でした。その後、100億円程度が数年続きますが、私が官房長官になって総務省が広報に尽力したことで、2014年度には400億円弱まで伸び、2015年度の制度改正で、控除枠を拡充し、ワンストップ制度の導入で手続きを簡素化したことで、約1,600億円まで伸びました。そして、2021年度では、初年度の約100倍となる約8,300億円となり、誰もが知っている制度に成長しました。
自治体からは多くの感謝が寄せられます。ふるさと納税は小さな自治体ほどメリットが大きく、集まった寄附金を活用して、子育て支援をはじめとする地域の課題、これまでに手の届かなかった政策が実現されています。
また、地域の産品を返礼品にしたところ、農家の収入が安定して若い人が増えた、伝統工芸品の後継者ができた、自治体職員が創意工夫をするようになったといった地域にいい効果が表れています。多くの方に利用され、こうした喜びの声をいただくと、本当に制度をつくってよかったと、感慨深いものがあります。

金児 憲史
1978年広島県生まれ。
2000年に行われたオーディション「21世紀の石原裕次郎を探せ」に応募し、俳優としてデビュー。ドラマ「功名が辻」「八重の桜」、映画『グラスホッパー』などに出演。2018年には歌手デビューも。
楊原 京子
1982年奈良県生まれ。
1998年にドラマ「命賭けて」の主役を演じ、以降もドラマ「アンフェア」「医師たちの恋愛事情」、映画『パッチギ!』『ハッピーランディング』などに出演。2020 年5月に第1子、2022年4月に第2子を出産した。