ふるさと納税と住宅ローン控除を併用するならここに注意!

年金受給者のためのふるさと納税

ふるさと納税も住宅ローン控除も、税金に関する控除として利用者にとてもメリットのある制度です。
しかし、併用して控除を受ける場合には、しっかり考えて申告しないと損をしてしまうリスクがあります。
さらに、ここ数年で住宅ローン控除に関する法改正が数回行われ、さまざまなサイトに掲載されている情報もどれが最新のものかわかりにくくなっています。
そこで、ここでは住宅ローン控除とはなにか、ふるさと納税の申告方法による住宅ローン控除との関係や併用する場合の注意点など、ふるさと納税と住宅ローン控除の関係について、2022年9月時点での最新情報をまとめました。

目次

住宅ローン控除とは

住宅ローン控除とは、住宅を取得した個人に対して国が行う税制優遇措置で、正式には「住宅借入金等特別控除」といいます。
広く国民が住宅を購入できるように、住宅ローンに対する金利の負担軽減を目的としています。

制度の適用基準をまとめました。

【住宅ローン減税の概要(2022年度税制改正後)】
制度の適用期間 2025年(令和7年)年末までに入居
控除期間 新築:13年、中古:10年
対象となる内容 ・自分が住むための新築・中古の物件購入、増改築、リフォーム
・住宅部分の床面積が50㎡以上(所得によっては40㎡~)
・床面積の2分の1以上が居住用であること
対象となる人 ・上記のために返済期間10年以上の住宅ローンを借り入れた人
・年間合計所得2,000万円以下(1,000万円以下でも可能な場合あり)
控除される税金 所得税と住民税

制度の適用期間

2025年(令和7年)の年末までに入居した人に対して、住宅ローン控除が適用されます。
なお、住宅の取得から6か月以内に入居する必要があります。

控除期間

新築物件の場合は13年間、中古物件の場合は10年間、毎年控除が受けられます。

対象となる内容

一戸建て・マンション問わず、自分が住むための住居として新築・中古の物件を購入もしくは増改築・リフォームした場合が対象です。
登記簿に記載されている数値を基準として「住宅用の床面積50㎡以上あること」が条件で、一般的な間取りだと2LDK程度です。
マンションの場合、階段や通路などの共有部分は含まないのでご注意ください。
また、自営業などで店舗と居住用を兼ねた住宅に住んでいる方は、全体の2分の1以上を居住用としていることも条件に含まれます。

対象となる人

上記の「対象となる内容」の物件のために、返済期間10年以上の住宅ローンを銀行から借りた人が対象です。 投資用物件や半年以上住む予定のない土地のみの購入は対象外です。 借りた人(=控除を受ける人)の年間合計所得が2,000万円を超えると控除を受けられませんが、2,000万円を下回った年は控除を受けられます。 なお、年間合計所得が1,000万円以下の場合、住居の床面積が40㎡以上50㎡以下でも住宅ローン控除を受けられます。

控除される税金

住み始めた年の年末借入残高に対して、所得税の0.7%が減税され、所得税から引ききれない分は住民税から引かれます。
住民税からの控除には上限があり、所得税の課税総所得金額等の5%(最高9.75万円)までと決まっています。
また借入残高にも上限があり、住宅の環境性能などに応じて変わります。
例えば、省エネ基準適合住宅を新築で購入した場合、借入限度額3,000万円まで住宅ローン控除が受けられます。

既に住宅ローン控除を受けている人はどうなる?税制改正の変更点

既存の住宅ローン控除の適用期間が2021年で終了してしまうため、2022年に再度改正され、2025年居住開始まで延長されました。
その際、今までとは内容が変更された部分があるため、概要を居住開始年ごとにまとめました。

【居住開始年別住宅ローン控除概要】
住み始めた年 控除期間 控除率 最大控除額 全期間
最大控除額
住民税の控除上限
2018年 10年間 1.0% 40万円 400万円 課税所得×7%
(最大136,500円)
2019年 ~9月 10年間 1.0% 40万円 400万円 課税所得×7%
(最大136,500円)
10月~ 13年間 1~10年目 1.0% 40万円 520万円
11~13年目 1.0%
または物件価格×2%÷3
40万円
2020年 13年間 1~10年目 1.0% 40万円 520万円 課税所得×7%
(最大136,500円)
11~13年目 1.0%
または物件価格×2%÷3
40万円
2021年 10年間 1.0% 40万円 400万円 課税所得×7%
(最大136,500円)
2022年 新築:13年間
中古:10年間
0.7% 35万円 455万円 課税所得×5%
(最大97,500円)
2023年 新築:13年間
中古:10年間
0.7% 35万円 455万円 課税所得×5%
(最大97,500円)

控除期間や控除率、住民税の控除上限などは、住宅ローン控除の減税額に直接かかわってくるため、しっかり確認しておきましょう。

また、2022年度の改正では住宅の環境性能が細分化され、性能によって借入限度額(=住宅ローン控除が適用される住宅ローン残高)が細かく分けられています。

住宅ローン減税概要
※出典:国土交通省

これから新しく住宅ローンを借りて家を購入する場合、住宅ローン控除についての詳細は業者や銀行にきちんと説明してもらいましょう。
なお、居住開始後に制度が変わっても、控除期間満了まではご自身が住み始めた年の住宅ローン控除が適用されます。

ふるさと納税とは

ふるさと納税による寄付金控除は、住宅ローン控除と同じく所得税と住民税から控除されます。
控除される金額は、寄付総額から2,000円を差し引いた金額です。
ふるさと納税を行うと受けられる寄付金控除の申請方法は、「ワンストップ特例制度」と「確定申告」の2種類です。

ワンストップ特例制度

ワンストップ特例制度は、本来確定申告が必要になるふるさと納税を簡単に利用できるようにするために作られた制度です。
一定の適用条件があるものの、確定申告よりも簡単に寄付金控除を受けられるようになるため、多くの人が利用しています。
ワンストップ特例制度を利用する場合、ふるさと納税で寄付を行うたびに寄付先の自治体へ必要書類を送付します。
控除される税金は住民税のみですが、控除全額を12で割って毎月控除されるため、控除される合計額は確定申告時とほとんど変わりません。

>>ワンストップ特例制度について詳しくはこちら

確定申告

1月1日〜12月31日の間に行ったふるさと納税について、翌年の原則2月16日〜3月15日の間に確定申告で申請します。
控除される税金は所得税と住民税。
所得税は申告後およそ1〜2か月で確定申告時に指定した口座に還付金が振り込まれます。
住民税は6月から1年間、所得税からの還付金を除いた残額を12で割った金額が毎月控除されます。

>>確定申告について詳しくはこちら

ふるさと納税では、寄付を行った全額が控除を受けられるわけではなく、控除限度(上限)額が決まっています。
限度額は収入や家族構成、その他控除の有無によって変動するため、事前に必ずシミュレーションを行い、限度額を超えないようにしましょう。
限度額を超えた分の寄付は控除を受けられず、「純粋に寄付をした」ことになります。

>>控除限度(上限)額のシミュレーションはこちら

ふるさと納税と住宅ローン控除の関係

ふるさとふるさと納税による「寄付金控除」と、住宅ローンの利用による「住宅借入金等特別控除」は、ともに「所得税と住民税から控除を受けられる」という共通点を持ち、併用できます。
所得税と住民税は、その年の課税所得によって納税額が決定します。控除の方法は税額控除のため、納める税額以上に控除することはできません。

また、ふるさと納税の申請方法によって控除される仕組みが異なり、満額の控除が受けられない可能性があるため、注意が必要です。
ここでは、ふるさと納税の申請方法による控除の違いを解説します。

「ワンストップ特例制度」を利用する場合

ふるさと納税の申請方法で「ワンストップ特例制度」を選択した場合、ふるさと納税の控除分はすべて住民税から控除されます。
一方、住宅ローン控除は基本的に所得税から控除され、引ききれなかった分が住民税から控除されます。
住民税から控除できる住宅ローン控除の上限額は、所得税の課税総所得金額等の5%(最高9.75万円)と決まっています。

控除の順番は、以下の通りです。

①住宅ローン控除分が所得税から税額控除される
②所得税から引ききれなかった住宅ローン控除分が、住民税から最高9.75万円まで税額控除される
③住民税からふるさと納税控除分が税額控除される

所得税は課税所得×所得税率で決まるため、課税所得が下がれば所得税も下がります。
ふるさと納税でワンストップ特例制度を利用した場合、すべて住民税から控除されるため、所得税の計算の元となる課税所得には影響がありません。
また、住宅ローン控除が住民税の限度額(9.75万円)まで届いたとしても、ふるさと納税の控除限度(上限)額は住民税から十分控除できる仕組みになっています。

ふるさと納税の控除限度(上限)額内で寄付を行うのであれば、ワンストップ特例制度を利用した場合は「住宅ローン控除」「ふるさと納税の控除」ともに控除金額で損をすることは基本的にはほとんどありません。

「確定申告」の場合

ふるさと納税の申請方法で「確定申告」を選択した場合、ふるさと納税の控除分は所得税と住民税の両方から控除されます。
一方、住宅ローン控除分も同じように所得税と住民税から控除されます。
住民税から控除できる住宅ローン控除の上限額は、所得税の課税総所得金額等の5%(最高9.75万円)と決まっています。

控除の順番は、以下の通りです。

①ふるさと納税控除分が給与所得から所得控除される
②課税所得が①によって減少し、その所得を元に所得税・住民税が決定する
③住宅ローン控除分が所得税から税額控除される
④所得税から引ききれなかった住宅ローン控除分が、住民税から最高9.75万円まで税額控除される
⑤住民税からふるさと納税控除分が税額控除される

ここで重要なポイントは、①の「最初に行われる控除がふるさと納税の所得控除である」ことです。

ふるさと納税は給与所得から所得控除されるため、課税所得が減少します。
所得税は課税所得×所得税率で決まるため、課税所得が下がれば所得税も下がります。
所得税が下がると、引ききれない住宅ローン控除分が多くなり、その分は住民税から引かれます。
しかし、住民税から引かれる住宅ローン控除分は上限が9.75万円と決まっているため、上記表の赤枠部分のように上限を超えてしまう可能性があるのです。
超過した住宅ローン控除の赤枠部分は住宅ローン控除が受けられません。

なお、住民税からの住宅ローン控除が上限まで届いたとしてもふるさと納税は十分控除できる仕組みになっていますが、所得税・住民税が少ないためにふるさと納税の一部しか控除されないケースもあります。

住宅ローン控除とふるさと納税を併用する場合の注意点

住宅ローン控除とふるさと納税を併用する場合の注意点を、ワンストップ特例制度と確定申告にわけて紹介します。
ふるさと納税は年末になって急に確定申告が必要になる場合があります。
どちらの方法で申請しても控除額に影響がでないよう、両方ともぜひご確認ください。
なお、住宅ローン控除とふるさと納税を併用する場合、ふるさと納税の控除限度(上限)額が変動することがあります。
ふるさと納税を行う前に、必ず詳細シミュレーションを行ってください。

>>控除限度(上限)額のシミュレーションはこちら

ワンストップ特例制度を利用する場合の注意点

ワンストップ特例制度は、確定申告をせずに控除が受けられる便利な制度です。
しかし、住宅ローン控除と併用する場合は以下の点に注意が必要です。

住宅ローン控除1年目は利用できない

住宅ローン控除を利用する場合、初年度は確定申告が必要です。
そのため、住宅ローン控除を利用する最初の年は、ワンストップ特例制度ではふるさと納税の控除を申請できません。

年末調整されない控除を受ける場合は利用できない

ワンストップ特例制度は、「年末調整を行う給与所得者」が利用できる制度です。
ふるさと納税のような寄付金控除、医療費控除、雑損控除の3つは年末調整されないため、これらの控除を受ける場合には確定申告をしましょう。
なお、退職後に再就職していないため年末調整が受けられなかった場合も確定申告が必要であり、ワンストップ特例制度は利用できません。

ワンストップ特例制度を利用するつもりで申請書を寄付先の自治体へ提出していても、確定申告をするとそれまで提出したワンストップ申請書は無効になります。
確定申告を行う時は、忘れずにふるさと納税の控除も申告しましょう。

確定申告をする場合の注意点

住宅ローン控除1年目や、ふるさと納税のほかに適用する控除がある場合は確定申告を行います。
住宅ローン控除とふるさと納税を併用する場合、以下の点に注意して確定申告を行いましょう。

満額控除されないことがある

「住宅ローン控除とふるさと納税を併用する場合の注意点」で解説しましたが、ふるさと納税の所得控除によって納める税金が減少し、住宅ローン控除が満額適用されないことがあります。
住宅ローン控除とふるさと納税を併用した場合、ふるさと納税の控除限度(上限)額に影響があるかどうかは、年収や配偶者の有無、社会保険料などによって大きく変わります。
併用を検討している方は、事前に必ず詳細シミュレーションを行いましょう。

>>控除限度(上限)額のシミュレーションはこちら

申告漏れに注意

ふるさと納税をワンストップ特例制度で申請していても、確定申告を行うとすべて無効になります。
確定申告時には、ふるさと納税についても必ず申告しましょう。
ワンストップ申請書を提出した自治体への連絡は不要です。
また、住宅ローン控除2年目以降に年末調整が既に済んでいて、翌年ふるさと納税や医療費控除を確定申告する場合には、源泉徴収票の住宅借入金等特別控除額の欄に書かれた金額を確定申告書に転記します。
「年末調整が済んでいるから確定申告書には記載しなくていい」わけではないため、注意が必要です。

住宅ローン控除とふるさと納税を併用する場合の手順

住宅ローン控除とふるさと納税を併用する場合の控除までの流れを、「ワンストップ特例制度を利用」「確定申告」する場合に分けて解説します。

ワンストップ特例制度を利用する場合

①ふるさと納税を申し込む【今年】

当サイトや自治体のふるさと納税ページを利用して、ふるさと納税を申し込みます。
ほとんどの自治体や返礼品の購入ページでは、ワンストップ特例制度を利用するかどうかを問うチェックボックスがあります。
忘れずに、を入れましょう。
制度利用の申し込みを忘れてしまうと、ワンストップ特例制度の申請に必要な書類「寄附金税額控除に係る申告特例申請書」が届きません。
なお、忘れしまった場合は当サイトのコチラから申請書がダウンロードできますので、必要事項を記入しましょう。

②寄付先の自治体から返礼品と書類が届く【今年】

寄付を行った自治体から、申し込みをした返礼品と、「寄附金受領証明書」「寄附金税額控除に係る申告特例申請書」が届きます。
書類は返礼品よりも先に届くことが多いです。
2種類の書類の内、「寄附金税額控除に係る申告特例申請書」に本人確認書類を添えて、寄付先の自治体へ郵送します。
書類は翌年の1月10日に自治体必着で、寄付の度に送付します。

③年末調整で住宅ローン控除を申請する【今年】

税務署から送られている「給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書」の今年分に、必要事項を記入します。
この書類は、一般的に「住宅ローン控除申告書」と呼ばれています。
この申告書と、金融機関から届く「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」を、年末調整の書類とともに勤務先へ提出します。
申告書を紛失した場合は税務署へ、年末残高等証明書を紛失した場合は金融機関へ連絡して再発行を依頼しましょう。

④控除が始まる【翌年~翌々年】

ワンストップ特例制度を利用すると、すべて住民税から控除されます。
ふるさと納税の寄付分と、住宅ローン控除で所得税から引ききれなかった分がある方はその分が、6月から1年間かけて控除されます。

>>ワンストップ特例制度について詳しくはこちら

確定申告を行う場合

①ふるさと納税を申し込む【今年】

当サイトや自治体のふるさと納税ページを利用して、ふるさと納税を申し込みます。

②寄付先の自治体から返礼品と書類が届く【今年】

寄付を行った自治体から、申し込みをした返礼品と、「寄附金受領証明書」が届きます。書類は返礼品よりも先に届くことが多いです。
「寄附金受領証明書」は確定申告時に税務署へ提出するため、すべての寄付分を大切に保管しておきましょう。
ふるさと納税ニッポン!で寄付を申し込むと、複数の寄附金受領証明書の代わりに1枚の書類をダウンロードするだけで済むためとても便利です。

③年末調整で住宅ローン控除を申請する【今年】

税務署から送られている「給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書」の今年分に、必要事項を記入します。
この書類は、一般的に「住宅ローン控除申告書」と呼ばれています。
この申告書と、金融機関から届く「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」を、年末調整の書類とともに勤務先へ提出します。
申告書を紛失した場合は税務署へ、年末残高等証明書を紛失した場合は金融機関へ連絡して再発行を依頼しましょう。

④源泉徴収票を受け取る【今年】

多くの場合、12月の給与明細とともに源泉徴収票が勤務先から配布されます。翌年の確定申告時に必要なため、間違えて処分しないように注意しましょう。

⑤確定申告を行う【翌年】

例年、2月16日から3月15日が確定申告期間です。確定申告書類を作成し、税務署へ提出しましょう。
ふるさと納税の寄付分は、「寄付金控除」の欄に記入します。
住宅ローン控除の分は、年末調整済みの場合源泉徴収票に書かれている「住宅借入金等特別控除の額」を転記します。

⑥所得税からの還付金を受け取る【翌年】

確定申告を行った1〜2か月後に、申告時に指定した金融機関の口座に所得税からの還付金が振り込まれます。

⑦住民税の控除が始まる【翌年~翌々年】

ふるさと納税の寄付分と、住宅ローン控除で所得税から引ききれなかった分がある方はその分が、6月から1年間かけて控除されます。

>>確定申告について詳しくはこちら

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