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この人に会いたい「道の駅むなかた・水産販売部 伊藤美幸さん」

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道の駅むなかた・水産販売部 伊藤美幸さん

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道の駅むなかた・水産販売部 伊藤美幸さん
会える場所

道の駅むなかた

福岡県宗像市江口1172番地

0940-62-2715

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人口約9万人の宗像市に位置。全国の道の駅の中でもトップの売り上げを誇る
魚は切り身でないと売れない。そこまで消費者の魚離れは進んでいる。しかし、「道の駅むなかた」は平日でも開店前から行列ができ、1匹丸のままの鮮魚の争奪戦が繰り広げられている。そんな現場で指揮をとるのは、女性だ。彼女の読みが売り上げを左右する。「女のくせに出しゃばるな」が「おまえ、なかなかやるのう」に変わるまで――。

魚は切り身でないと売れない。そこまで消費者の魚離れは進んでいる。しかし、「道の駅むなかた」は平日でも開店前から行列ができ、1匹丸のままの鮮魚の争奪戦が繰り広げられている。そんな現場で指揮をとるのは、女性だ。彼女の読みが売り上げを左右する。「女のくせに出しゃばるな」が「おまえ、なかなかやるのう」に変わるまで――。

取材・文/柿野明子、撮影/藤原武志

地方創生の拠点として期待のかかる「道の駅」。登録件数が全国1000ヵ所を超え、経営に苦慮する“負け組”も出始める中、いまだ快進撃が止まらないのが、福岡県宗像市の「道の駅むなかた」である。
昨年度の売上高は、堂々の18億円。九州エリアでは7年連続売り上げナンバーワンとなり、オープンから丸8年となる2016年11月には、累計来館者数が1400万人を突破した。

リピーターをがっちりつかむ理由は、「地魚」に特化した店づくりにある。
周囲の店との共存を図るため、刺身や寿司はなく、漁師自らがパック詰めした魚を1匹丸のままで販売する。加工コーナーで3枚おろしを頼む場合は、1匹100円の有料とした。
消費者の魚離れが進むなか、魚は切り身でなければ売れない、との声もあったが、水揚げから1時間で届く地の利を生かし、圧倒的な鮮度のよさで常識を打ち破った。「道の駅むなかた」には平日でも開店前から行列ができ、売り場ではいまなお、鮮魚の争奪戦が繰り広げられている。
その魚に鋭い眼光を飛ばし、現場で指揮をとる司令塔は……なんと女性だ。
パートで入社し、現在は正社員として水産販売部門の責任者を務める、伊藤美幸さん(52)。気の荒い漁師たちと丁々発止に渡り合い、彼女の読みが売り上げを左右することもある「道の駅むなかた」のキーパーソンである。

パートから水産販売責任者に

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地元の高校を卒業後、バスガイドとして福岡市内の観光バス会社に就職した伊藤さん。21歳で結婚したのを機に宗像市へ戻り、2年ごとに出産。3人の子どもを育てながら、さまざまな仕事に携わってきた。
そんな伊藤さんに転機が訪れたのは、今から8年前。新しくオープンする「道の駅むなかた」の求人に応募し、高い倍率ながらパート職の座を獲得。魚の加工コーナーに立つことになった。

「若いころ、スーパーの鮮魚コーナーで2年ほど働いた経験があったんです。それと、仕出し屋さんで働いていたときに調理師の免許を取っていた。それでなんとか採用されたんだと思います」
だが、以前スーパーで経験済みといっても、せいぜい魚のパック詰め程度。本格的に魚をおろしたことはなかった。
「道の駅むなかた」では、そんな伊藤さんのもとへ初日から客の注文が殺到した。
まな板の上に魚が山と積まれ、来る日も来る日もフル回転で魚をさばく日々。
「最初の1年目は無我夢中。手は絆創膏だらけでしたね。指先に魚の骨が刺さり、切開したこともあります。どの角度に包丁を入れたらいいか、体で覚えていくしかありませんでした」

2年目はようやく仕事にも慣れ、まわりを見回す余裕も出てきた。
すると、伊藤さんに、ふとある思いが浮かぶ。
「私、魚を扱いよるのに、魚のことをなんも知らんとやなか?」
魚の食べ方や保存法はもとより、魚の寄生虫や危険種……。
考えてみれば、正式な名称すら知らない魚もあった。
そこから伊藤さんの図書館通いが始まる。一つわかったと思えば、それに付いてくる新たな疑問。休みの日、ランチに誘おうと電話してくれた友人に
「あんた、また図書館におると?」と、あきれられるほど通い詰めた。
「頑張ったのには二つ理由があって、一つはお給料。最初のころ評価制だったんです。上に認めてもらえないと給料が上がらないじゃないですか。それともう一つは、離婚したこと。いちばん下の娘が嫁いだのを機に、お互い好きなことをしようって、さばさばしたものでした。けれど、これからは一人で食べていかなくちゃならない。本気になったんですね」

いい魚をそろえるためには一歩も引かない

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伊藤さんは習得した知識をもとに、職場の改善にも乗り出した。
まず、漁師が商品に貼るシールを「カサゴ(アラカブ)」というように標準和名に統一。
地方名をカッコで書き添えることを提案した。
売り場には、さまざまな魚が出品される。なかには、見たこともない魚や、ただ「鮮魚」とだけ書かれた商品も。
しかし、魚には強い毒性を持つものがある。そこで、名前がはっきりしない魚は県の水産海洋技術センターへ鑑定に回し、魚種や標準和名が判明しないと出品できないようにした。

干物についても、産地偽装がないよう、原産地の証明を月に1度提出してもらっている。仲買人から魚を仕入れた場合は、領収書に産地を記入してもらい、その証明がないと商品バーコードが出せない仕組みだ。
「うちの商品は絶対に間違いがないことを、お客さまにもっとアピールしていきたいんです」
こうしたルール改正は、決してすんなり行ったわけではない。
「そりゃ漁師さんに叱られたこともありますよ。女のくせに出しゃばるな、とか。魚は入れてやるけど値を下げたら承知せんぞ、とか。でも、そんなときは私も一歩も引きませんから。いい魚をそろえるためには、絶対に値を下げないと啖呵を切るし、駆け引きもするし、泣き落としだってやりますよ(笑)」
漁師の世界は厳格な男社会だ。「おまえ、なかなかやるのう」と認めてもらえるまで、2〜3年かかったと打ち明ける。

最高の魚を「絶対に売り切る」という矜持

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伊藤さんがこの仕事に惹かれ、これまで感じたことのないようなやりがいを見出したのは、漁師たちが体を張って出て行く姿を見たことが大きく影響している。
「漁師さんたちは、風がびゅうびゅう吹いて、帽子が飛ばされるような海の中にも出ていくことがあるんです。
波にさらわれ亡くなった人もいます。ロープに挟まれて大ケガをした人もいます。これが陸なら車で運べるけど、海じゃヘリもうまく付けられんでしょうが。やっぱり命を賭けとるとですよ。そうやって漁師さんたちが捕ってきた魚やけん、絶対に値を下げんで売り切ってみせる。それが私の矜持だと思っているんです」
しかし、魚がだぶつき、なかなか売れそうにない日もある。あれほどの魚をよそに回さず、出荷してもらったのに、売れ残りでもしたら漁師に向ける顔がない。伊藤さんは、矢も楯もたまらず売り場で声を上げる。
「見てください、さわってください、カゴに入れてください」
口をついて出た言葉が、この名売り文句。いまや伊藤さんのキャッチフレーズだ。
捕れたばかりのイカは、触れると色がさっと変わる。タイは鮮度によって微妙に身のやわらかさが変わる。その変化を触れて感じてほしいと言う。

「身がくずれるほど、ギュッと押さえつけられては困るけど、とにかく鮮度の良さを知っていただきたいんです。それは、ここでしか伝えられないことだし、うちがこれだけいいものを出している自信の表れでもあるから」
真冬から早春にかけて、フグが旬を迎える。「道の駅むなかた」では、地元のフグを出荷したいとの伊藤さんの呼びかけで、18人の漁師がフグ処理師の免許を取得。毒を持つ部位をきれいに除去したフグが売り場に並ぶようになった。
むろん、言い出しっぺの伊藤さんも免許保持者だ。
こうした伊藤さんの熱心な仕事ぶりを誰よりも応援してくれたのが、同館長の山崎宏幸さんだ。山崎さん自身も、スーパーの店長から公募で入社。「道の駅むなかた」を発展に導いた立役者だ。伊藤さんは、山崎さんとぶつかりながらもその働きが認められ、嘱託を経て正社員となり、2年前から水産販売責任者を任せられている。
「冬場は東京からのお客さまが増えます。お土産に配るからと、一人で4パックも5パックも買っていかれますよ。東京の半値か、それより安いと言ってね」
結婚が早かったこともあり、プライベートでは孫が8人。どんなめぐり合わせか、二人の娘の婿はどちらも漁師だ。今は休日に孫と遊ぶのがいちばん楽しみという。
何をして遊ぶのかと尋ねると、伊藤さんはおかしそうに身をよじって言った。
「それがね、魚釣りなんです(笑)」

道の駅むなかた

住所:
▼住所
〒811-3502 福岡県宗像市江口1172番地
電話:
▼電話
0940-62-2715
営業時間:
▼営業時間
9:00~17:00(10月~5月)8:30~17:00(6月~9月)

※レストランはまゆう11:00~16:00(通年)
※米粉パン工房「姫の穂」9:00~17:00(通年)
※アンテナショップ正助ふるさと村9:00~17:00(10月~5月)8:30~17:00(6月~9月)

休館日:
▼休館日
毎月第4月曜日(祝日の場合は翌日)8月15日~17日、12月31日~1月5日
ホームページ:
▼ホームページ
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