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“行ける”ふるさと納税「ガールズ&パンツァーうぉーく!」体験ルポ

行けるふるさと納税「ガールズ&パンツァーうぉーく!」体験ルポ行けるふるさと納税「ガールズ&パンツァーうぉーく!」体験ルポ

600件以上の申し込み

「ガルパンうぉーく」は、今年9月から受付が開始されている、大洗町のふるさと納税「行ける!ふるさと納税」の返礼品の1つ。寄付額は2万円と3万8000円の2種類があり、いずれも目玉の特典となっている。大洗町が、人気アニメ「ガールズ&パンツァー」(ガルパン)の舞台となっていることから、聖地巡礼を支援するスマートフォンアプリ「舞台めぐり」を使い、シナリオゲーム形式で巡るというもの。アニメ人気もあり、これまで600件以上の申し込みがあるという。

大洗町の「行ける!ふるさと納税」は、「位置情報ゲーム」と「聖地巡礼」という2つの要素をふるさと納税に反映させた点で新しさがある。それぞれ何がすごいのか、説明していこう。

「位置情報ゲーム」とは、「ポケモンGO」や「イングレス」のように、スマートフォンの位置情報(GPS)を使って遊べるようにしたゲームのことだ。この2作品は、実際に地域おこしにも活用されており、特に「ポケモンGO」では、東日本大震災と2016年の熊本地震に被災した4県(岩手・宮城・福島・熊本)の復興に役立てる取り組みが10月以降続けられており、ふるさと納税にも役立てられないかと検討する動きもある。「行ける!ふるさと納税」は、この「ポケモンGO」に先立つ形で実現させており、非常に新しい取り組みであるといえる。

主人公達5人のシナリオから構成される

主人公達5人のシナリオから構成される

聖地巡礼は1000年前にも

一方「聖地巡礼」は、アニメやマンガやゲームの舞台を観光する取り組みのことを指し、近年では、ドラマや実写映画の舞台を探訪する動きにも用いられることがある。アニメ「君の名は。」などの大ヒットにより今年の流行語大賞トップ10に入り、今ホットな言葉の1つだともいえる。

今となっては「聖地巡礼」はもっぱら地域振興という言葉と並び称されるようになっているが、実はその歴史は古い。物語の舞台を訪れたい、という思いは普遍的なもののようで、約1000年前の平安時代に菅原孝標女によって書かれた「更級日記」にも、「源氏物語」の舞台となった平安京に行きたい思いがつづられているほどだ。物語の舞台が観光地化する動きは、一般人の観光が大衆化した戦後から始まっており、例えば、高倉健主演の映画「幸福の黄色いハンカチ」の大ヒットにより、舞台となった北海道夕張市に多くの観光客が訪れた例がある。こうした動きが2000年代に入りアニメなどにも広がるようになり、「聖地巡礼」と呼ばれるようになった。

マップも付いているので、初めて大洗に訪れる人でも回れるようになっている

マップも付いているので、初めて大洗に訪れる人でも回れるようになっている

「戦車道」の全国大会

2010年代以降、行政とアニメとがタイアップする例が増えてきており、「ガルパン」の舞台となった大洗町もその一つといえる。かつて大洗町は、東日本大震災による津波の被害と、福島第一原発事故の風評被害の影響を大きく受けていた。2010年度には年間約554万人いた観光客数が、震災後の2011年には約298万人にまで激減する。商店街やショッピングモールでは閉店が相次ぐような状況に陥っていたが、そこで転機として現れたのが、「ガルパン」だった。

「ガルパン」は2012年10月からテレビ放送され、2013年3月に放送が終了する。物語は女子高生達が戦車に乗って己の修練とする「戦車道」と呼ばれる武道に励み、「戦車道」の全国大会に挑むというもの。実に突飛な設定となっているのだが、スポーツ根性あふれるストーリーで、後に劇場アニメにもなるほどの人気作となっている。大洗をはじめとした茨城県内各地の風景が克明に描かれているのが特徴で、現在では多くのファンが大洗を訪れる。毎年11月に開かれる「大洗あんこう祭り」が特に顕著で、2011年には3万人にまで落ち込んでいた来場者が、今年は過去最高の13万人を記録した。大洗町の人口は約1万7000人で、実に約8倍もの人が1日で訪れたことになる。年間観光客数を見ても、2015年には444万人まで取り戻し、震災年との差は約146万人にものぼる。アニメと侮ることなかれ、今や「聖地巡礼」は社会的現象を引き起こしているのだ。

だが、それでも震災前の約554万人にまで回復はしていない。復興はまだ道半ばなのだ。そこでさらに攻勢に出たのがこの「聖地巡礼」をふるさと納税に取り入れた「行ける!ふるさと納税」だった。従来型ともいえる、単にふるさと納税をしてもらうだけでなく、一人でも多くの人に大洗に来てもらう狙いが見られ、この点でもとても新しい取り組みといえる。

町のシンボル「ポートタワー」の下であんこう祭りが大盛況

町のシンボル「マリンタワー」の下であんこう祭りが大盛況

アプリのダウンロードが必要

さて、この「ガルパンうぉーく」、一見ガルパンファン向けの返礼品に見受けられるが、決してそうではない。初めて大洗を訪れる人にも十分楽しめるようになっている。ここで、聖地巡礼支援アプリ「舞台めぐり」や、ゲーム「ガルパンうぉーく」について少し紹介しよう。

まず、「ガルパンうぉーく」を立ち上げるには、無料のスマートフォンアプリ「舞台めぐり」の最新版をストアからダウンロードする。「舞台めぐり」は「聖地巡礼」をしたい人向けに、それぞれの作品の舞台が具体的にどこなのかを地図上で教えてくれるもので、現在58作品が登録されている。この中に「ガルパンうぉーく」が入っているのだが、シリアルコードを入力しないとゲームができないようになっている。このシリアルコードが書かれたチケットが「行ける!ふるさと納税」の返礼品の1つになっており、寄付した人にしか遊べない仕組みというわけだ。

プレイヤーは主人公達が通う「大洗女子学園」への転校生という設定で、主人公達5人のキャラクターから1人を選び、そのキャラクターと一緒に大洗町を巡るというもの。オリエンテーリングさながら、それぞれの場所にチェックインしていくのだが、このチェックインの方法が多岐にわたっている。大きく3つあり、ゲーム中で指示された目的地に単に行けばいいものから、目的地でQRコードを探して撮影するというもの、そして目的地でカメラを使って「探し物」をするといったものまである。この「探し物」には「ポケモンGO」にも活用されているARという技術が使われている。1人のキャラクターにつき1つのシナリオで構成されており、攻略するには3時間ほどかかるという。キャラクターのセリフは全てボイス付きで、シナリオやイラストまで全て完全にオリジナルとなっている。

オリエンテーリングさながらのミッションをクリアしていく

オリエンテーリングさながらのミッションをクリアしていく

街中にあるQRコードを読み取ってチェックインする

街中にあるQRコードを読み取ってチェックインする

“仮想”テーマパーク

「ガルパンうぉーく」をしていると、ただの変哲もない街が、何かのアトラクションパークに様変わりしているのではないかという錯覚さえ覚える。「舞台めぐり」作者の安彦剛志さんはこう話す。

「『舞台めぐり』の最大の強みは、数百億の投資をしなくてもテーマパークのような空間を作れることです。そのため初めて大洗を訪れる人でも十二分に楽しめるような配慮をしています。同じようなことは他の舞台でもできますから、現在各地域との連携を進めているところです」

テーマパークでまちおこしというと、自治体主導でテーマパークを作り、ひいては自治体そのものの破綻の原因となった夕張市が頭に浮かぶ。しかし、アプリを用いた“仮想”テーマパークであればそんなお金はかからずにすむ。

ちなみにこの「ガルパンうぉーく」、早くも年明け以後にはふるさと納税者以外でも遊べるチケットを販売する。ふるさと納税に限らずとも、そのチケットを買えば大洗に行きお金を落としてもらえるという算段だ。昨今、ふるさと納税限定品が各地で続々と出ている状況にある。だが、敢えてふるさと納税限定に固執しないというこの姿勢にこそ、「一人でも多くの人を我が町に」という地域振興の原点があるのではなかろうか。(取材・文・写真/河嶌太郎)

会見で「ガルパンうぉーく」の説明をする安彦剛志さん

会見で「ガルパンうぉーく」の説明をする安彦剛志さん

五つの全シナリオをクリアす ると先着 3000 人に「認定証」 が授与される

五つの全シナリオをクリアす ると先着 3000 人に「認定証」 が授与される

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